白い水着の女

私は大学時代、千葉県の御宿海水浴場の海の家で2ヶ月間、アルバイトをしていました。
海の家に泊まりこみで働いていたのですが、泊るのは海の家の屋根裏部屋。ここに友人と二人で寝泊まりして
一日中働いていたのです。
朝、6時頃おきて開店準備、7時頃になると近くの民宿を経営しているオーナー夫婦が朝食を持ってきてくれて、
4人で朝食。8時くらいになると通いのバイトの人達もやってきて、総勢8人くらいで仕事がはじまります。

海の家の仕事は多種多様。裏の駐車場に立って、海水浴にやってきた人たちに声をかけ、呼び込み。
店内での調理、販売、接客、゛店外での浮わ、サマーベット、パラソル、ゴムボートなどの貸し出し。
ローテーションを組んで、ありとあらゆる仕事をします。

夕方4時か5時で閉店となり、オーナーと一緒に近くの民宿に行き、お風呂にはいり夕食。
その民宿から海の家に戻るのが7時とか8時でした。

二人で営業の終わった、海の家で、何もやることがなく、夜、海に入って泳いだり、海岸でビールを飲んだりしてました。

ある日の夜、お盆ちかくだったと思いますが、友人は用事で東京に行き、その日は自分一人で、寝るには
まだ早い時間、海の家の前のテラスで月明かりに照らされた海を見ながら、ビールを飲んでました。
すると、近くの暗がりから、白いワンピースの水着姿の女性が歩いてきました。
年は20代後半、30くらいか、プロポーション抜群、驚くほどの美人。まっすぐに私のところへと
やってきました。
「ビール、おいしそうね」「あーはい」「私にも一杯頂戴」「あっ、その自動販売機で買えます」
(なんてバカなことを)「私、お金持ってないの、見るとわかるでしょ」「あーはい、あの自分が買います
ご馳走します」(あーなんとか言えた)
当時私は19歳くらい、美人、しかも白い水着姿、しどろもどろです。
「あーいいの、いいの、一口だけ、あんたの今飲んでいるの頂戴」
その女性は私の隣に座ると、私の缶ビールをサッと、奪い取り、うまそうにグビット!ゴクット!飲み干しました。
「あーおいしい、ところで、あんたここでなにやってんの?」
「あっ、自分はここの海の家に住み込みで、働いているんです」
「そう、じゃあ、シャワー貸して、それから大き目のシャツ貸して、下着なしで着るから」
「えっ、ああ、いいですけど、じゃあこっちです」
私はもう舞い上がっていました。夜、誰もいない海の家に水着の美女と二人きり、幸運にも一緒だった友人も
今日に限って、出かけていない。なんと幸運なことよ。
彼女をシャワー室に案内して、自分は急いで、屋根裏にあがりシャツを探した。大き目と言われてが、それらしいのが無くて、tシャツと短パンをようやく探して、おりた。
シャワー室の前に行き、「ここに置いときます」と声をかけた。
「ああ、ありがと、今行く」
中で裸でシャワーを浴びている姿を想像して、興奮した。これからどうしよう。
しかし、いったい何者なんだ。こんな夜遅くに水着一枚で海岸を歩いているなんて、
「ああ、気持ちよかった、これありがとね」
水着を片手に持って、彼女がシャワーからでてきた。
しばらく無言何と言っていいか、わからない、あせった。彼女はしばらく海の家の店内を眺めながら歩きまわる

「じゃあ、ありがとうね、また明日くるから」そのまま、外に出ていってしまった。
自分はあわてて追いかけ、「あ、送っていきます」(ようやく言えた)
「だめ、ここまででいい!」彼女は少しきつくそう言って、また暗がりへ、海岸沿いに歩いていってしまった。

翌日、朝開店準備をしていると、氷の配達のひとがやってきて、オーナーと話している。
「そういえば、今年はまだ、白い水着の女の噂、聞きませんね」
「ああそうだな、今年はまだ、聞かねえなあ」
私は昨夜の一件は誰にも話してなかった。秘密にしていた。
「なんですか?その水着の女の噂って?」
「ああ、5年前だったかなあ、すぐそこの海でおぼれて死んだ女だいてな、これがすげえいい女でよ、
白い水着の女でな、これが次の年から、そっちこっち出るらしくてな、幽霊が、美人だから、みんな会ったやつらは、鼻の下伸ばしてよ、喜んじゃって、幽霊だって聞いて、みんなびっくりよ」
「ほんとですか?」
「ああ、毎年、会った、声かけられたって、噂がでるんだ、お盆の頃だから、お前も用心しとけよ」

その日の夜は東京から帰った友人と一緒だった。友人に話すべきか、どうすべきか、悩んだまま、
いつものように、ふたりで海岸でビールを飲んでいた。
白い水着の女は来なかった。そのまま友人には言わなかった。
自分一人だったら来たのかなあ、残念であり、ほっとしたりもした。

毎年、お盆のころ、海水浴のニュースを見るたびに思い出します。DSCN0512_20090814222649.jpg
美人の幽霊なら怖くない。
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いつも楽しく観ております。
また遊びにきます。
ありがとうございます。

飲めない

酒を飲めない。飲まない。わしとしたら、永遠に出会いそうにないですね(笑)やない

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小嶋 博

Author:小嶋 博
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